倉庫DXとは?取り組み事例や推進に必要な5つのポイントを解説
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倉庫DXとは?
取り組み事例や推進に必要な5つのポイントを解説

倉庫DXとは、デジタル技術を活用して倉庫業務を自動化し、業務効率化や生産性向上を目指す施策です。人材不足やEC市場の成長を背景に、倉庫DXの取り組みが広がっています。この記事では、取り組み事例や推進に必要なポイントについて、アウトソーシングを検討している荷主企業の担当者に向けて解説します。ぜひ参考にしてください。

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倉庫DXの効果的な進め方と成功事例を解説!

庫DXとは?

倉庫DX(Warehouse Digital Transformation)とは、データやデジタル技術を活用することで倉庫業務を変革し、生産性向上や業務効率化を目指した取り組みです。
世の中は急速なデジタル化によって、顧客や市場ニーズが劇的に変化しつつあります。私たちは組織も人も、変革を恐れていては新たな波に乗り遅れてしまう時代を生きています。そこで登場した「第3のプラットフォーム」と呼ばれるクラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャルテクノロジーの4つの要素は、今やビジネスにおいて欠かせないものになりました。それらを活用することで新しいサービスやビジネスモデルが生まれ、競争上の優位性を確立することができます。
物流の一翼を大きく担う倉庫業務においても、IoTやAI、ロボティクスなどの最新の技術を活用し、倉庫内の情報収集・処理・管理などを自動化することで、業務効率と生産性の向上を図ることができます。

庫DXと物流DXの違いとは?

倉庫DXは、物流DXの一環と捉えることができます。国土交通省がまとめた『最近の物流政策について』では、物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義しています。既存オペレーションの改善、働き方改革の実現、物流システムの規格化などを通じて、物流産業のビジネスモデルそのものを革新する取り組みです。物流とは商品が消費者に届くまでの一連の流れを指すため、物流DXが目指すのはたとえば以下のようなサプライチェーン全体での機械化・デジタル化です。

  • コンテナターミナル運営の効率化
  • 海運の効率化
  • トラック幹線輸送の効率化
  • 入出庫の効率化
  • 庫内作業の効率化
  • 配送作業の効率化

これらのうち「入出庫の効率化」や「庫内作業の効率化」といった倉庫業務に関するものが、倉庫DXという位置づけになります。

庫DXが求められる背景

倉庫DXが求められる背景として、人材不足や小口配送の急増といった喫緊の課題が挙げられます。

倉庫DXが求められる背景

人材不足の深刻化

倉庫業務では、長期的な人材不足の深刻化が課題です。在庫の取り出しや荷物の積み込みといった倉庫業務には人材が欠かせません。人材が不足すると、業務の遅延や品質低下が懸念されます。慢性的な人材不足の解決策の一環として、倉庫DXによる業務の自動化が進められています。

EC市場の成長に伴う小口配送の急増

大手通販会社の台頭やコロナ禍の外出自粛などによってEC市場が成長し、小口配送が急増したことも、倉庫DXが求められる要因です。小口配送とは、1つの配送先に対して少量の貨物を送る配送方式です。企業や店舗への大口配送と比較して、小口配送は倉庫内での在庫管理が煩雑化し、業務全体の効率悪化を招きます。そのため倉庫内での効率化が求められます。

安全性を確保する必要性

重い荷物を取り扱う倉庫業務では、従業員の安全性確保も重要課題です。商品の落下事故が発生すると、作業員のけがや設備の損傷につながり、業務に悪影響を与えかねません。人の手を介さずに管理・運営できる倉庫DXが実現すれば、従業員の安全性と品質確保につながります。倉庫内で適切に在庫管理できれば、保管スペースの最適化や需要に合わせた在庫調整が実現可能です。

庫DX推進の具体的な内容と取り組み事例

倉庫DXは、自社の環境に合わせた適切な施策の導入が必要です。ここでは倉庫DX推進の具体的な内容と、いくつかの取り組み事例を紹介します。

まずは4つの具体的な内容について、それぞれ解説していきます。

倉庫管理システム

倉庫管理システムとは、WMSとも呼ばれ、倉庫内における業務を効率化するためのシステムです。このシステムを利用することで、商品の入出庫や在庫管理といった、リアルタイムでの倉庫内の状況を共有・管理できます。入出庫に関する機能が充実しているため、作業スピードが向上します。
事前に登録すると、誰が担当者になっても同じ作業が可能になるため、活用できる人材の幅が広がる点もメリットです。業務の標準化により、データの入力ミス、ラベルの貼り間違い、検品ミスといったヒューマンエラーを減らすことができます。

自動倉庫システム

自動倉庫システムとは、コンピュータ制御により、商品の入庫、保管、仕分け、出庫までの一連の流れを完全自動化するシステムです。部品の入ったコンテナや製品の段ボールケースなどの商品を、スタッカークレーンやシャトル台車が運び、倉庫内の作業を自動化します。
従来の固定ラックと違い、商品を取り出す動線や通路を確保する必要がなく、高さ方向の空間も有効に活用できます。保管効率を最大限に高めながら、省力化・省人化につながる点がメリットです。

自動搬送ロボット

自動搬送ロボットとは、商品の運送作業を自動化するロボットシステムです。代表的な種類として、AGV(無人搬送車)、AMR(自律走行型ロボット)の2種類が挙げられます。
AGVは、無人で搬送する移動ロボットで、床に設置された磁気テープのような誘導体に沿って走行します。決まったルートを移動することが一般的です。
AMRは、自己位置推定や障害物回避などの技術を搭載し、自ら走行通路を算出して自動走行する移動ロボットです。倉庫のレイアウトに合わせて柔軟に運行経路を計算します。

マテリアルハンドリング機器

マテリアルハンドリング機器とは、荷役作業を効率化する物流機器全般を指し、多くの種類があります。代表的なマテリアルハンドリング機器には、搬送コンベアがあります。
搬送コンベアとは、一定の速度で商品を搬送するための危機です。水平搬送には通常コンベア、上下搬送には垂直搬送機が使われます。そのほかにもマテリアルハンドリング機器はさまざまなタイプがあり、荷役作業の効率化や負荷軽減のために広く採用されています。

次に、企業の取り組み事例をいくつか紹介します。

1.WMSで繁忙期の生産性が向上

冷暖房機卸売業を展開するA社では、複数の倉庫において在庫管理の最適化や、効率的な荷受け・出荷のスケジュール管理ができるWMS(倉庫管理システム)を導入しました。WMSにより複数の倉庫のオペレーションに一貫性が生まれ、繁忙期の生産性が向上しました。
さらにこのWMSは操作がわかりやすいため、新人でも10日もあれば使いこなすことができ、スタッフの生産性向上にもつながりました。

2.AGVで入出庫搬送の負担軽減

空調製品などを製造するB社のパーツセンターでは、物流倉庫の入出庫搬送の時間を短縮したいと考え、無人搬送を可能にするAGVを導入しました。これにより、負担の大きかった中程度の大きさや重さの部品の入出庫搬送がスムーズになったことに加え、行き先指示も容易なため、現場からは喜びの声が上がりました。
空調部品は季節によって需要の変動が大きいことも課題でしたが、AGVはレンタル利用が可能なため、時期に応じて台数を調整して運用できたこともメリットでした。

3.最適化で生産性と作業品質が向上

ロジスティクス事業を展開するC社では、倉庫内の最適化を図るため、RFID(無線通信自動認識システム)と仕分けシステムを導入しました。入出荷検品作業と、通常仕分けおよび返品仕分け作業の生産性を、それぞれ向上させました。
生産性だけでなく、仕分けミスをほぼゼロに抑えるなど作業品質も向上しました。またシステムは現場でのトラブルシューティングが可能で、作業の停止もほとんど発生していません。

庫DX推進に必要な5つのポイント

倉庫DXを推進する際には、適用範囲や人材確保に注意する必要があります。ここでは5つのポイントについて解説します。

倉庫DX推進に必要な5つのポイント

倉庫DXの適用範囲を明確にする

DX技術は、すべての倉庫業務に適用できるわけではありません。「この作業はマンパワーできめ細かく対応する」「ここはロボットやAIで効率化する」など、DX技術の適用範囲を明確にしたうえで、必要な技術を選びましょう。大切なのは、DX化が目的ではなく手段であると考えることです。「時代の流れだから」と無理にDX化を進めても、活用されないと意味がありません。業務における課題をツールやシステムによってどの程度解決できるのか、しっかり見極めてください。

専門知識を持ったDX人材を確保する

DXは短期間で実現するものではありません。倉庫DXを推進するには、IT知識やデータの重要性の理解といったスキルを持つDX人材の確保が必要です。自社内で専門知識が不足している場合には、新たに人材を採用する、既存の従業員を育成するといった方法がありますが、人材獲得競争が激化している昨今では予定通りにいかないケースも想定されます。
早急に倉庫DXを進めたいなら、アウトソーシングも一つの方法です。委託先を選ぶ際には、自社に合っているか実績などを参考に選びましょう。

従業員教育を実施する

倉庫DXを推進する際は、従業員教育が必要不可欠です。倉庫DXの導入により、現場の作業内容や業務フローが大幅に変更されることになります。そのため従業員の理解や協力なくしてDXの効果を最大化するのは困難です。円滑な業務遂行のために、教育プログラムの導入や研修などの従業員教育を実施することが重要です。

社内でシステムを統一する

DX化を進めるうえで、社内システムの統一は重要なポイントです。従来、多くの企業では部署ごとにシステムを運用しているケースが見受けられます。しかしこれでは部署間を超えた連携が難しい状況が生まれてしまいます。全社で横断的なデータ活用を可能にするために、まずは整備・連携の検討が必要です。導入する機器やシステムと、自社のシステムの互換性も確認しておきましょう。

ROIを検討する

ROI(Return On Investment)とは、投資収益率または投資利益率のことです。投資(Investment)に対して、どの程度の利益(Return)が出たのかを表す指標です。私たちが普段よく使っている「コスパが良い・悪い」という考えを、数値化したものと言ってもいいでしょう。
もし100万円投資して200万円の利益が出た場合、ROIは200%です。ROIが高いほど投資効率が高いと判断されます。ROIを参考に、投資効果を見極めましょう。

流をアウトソーシングするなら、倉庫DXの先駆者安田倉庫へ

倉庫DXを自社で推進するのに不安な場合は、外部へのアウトソーシングがおすすめです。安田倉庫株式会社は物流の効率化をサポートする総合物流企業で、倉庫・物流センター運営を安心してアウトソーシングできます。
商品特性や課題に合わせた最適なソリューションの提供により、継続的な業務改善、効率化、最適化を進められます。各種実証実験を行い、すでにAGV、AGF、AMR導入を行うなど、倉庫現場のDX推進に力を入れています。

とめ

倉庫DXとは、データやデジタル技術を活用することで倉庫業務を変革し、生産性向上や業務効率化を目指した取り組みです。倉庫DXを推進する際には適用範囲を明確にし、DX人材の確保や従業員教育が必須となります。自社内での推進が難しい場合は、アウトソーシングが有効です。

安田倉庫株式会社は、首都圏を中心に全国へ物流事業を展開する企業です。創業100年の豊富なノウハウを活かして、当社倉庫における倉庫業務の効率化や高度化を実現しています。このように高度化した拠点をベースに多様な物流サービスを展開していますので、気軽にお問い合わせください。

〈監修者プロフィール〉

監修者

野尻達郎

安田倉庫株式会社 営業企画部
コンサルティング推進室 マネージャー

2012年に立教大学社会学部を卒業し、2022年に同大学でMBA(経営管理学修士)を取得。サントリー食品インターナショナルを経て、大手物流コンサルティング会社にて物流現場の改善から物流戦略の立案まで荷主企業の課題解決を支援。現在は荷主企業の物流課題解決に向けたコンサルティングと並行して、自社のマーケティング戦略の実装や営業DXにも積極的に取り組んでいる。