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医薬品の物流に必要な許可|
基本情報から種類まで解説

近年、物流企業が薬機法上の業許可を取得するケースが増加しています。
この記事では、メディカル物流(医薬品物流等)の流れや「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下薬機法)上の業態の定義、カテゴリー、必要な業許可、留意点などを解説しています。医薬品の物流業務をアウトソーシングする場合にどのような点を押さえなければならないのか知りたい方は、参考にしてください。

ディカル物流(医薬品物流等)とは

その名の通り、医薬品等を扱う物流業務です。医薬品の品質を維持するには、薬機法や厚生労働省が発出したGMP省令、GDPガイドライン(医薬品の適正流通基準)などに従い、厳格な管理が必要です。

具体的には、全工程で適切な温度管理と品質管理が欠かせず、工場や倉庫で保管・梱包・加工する際にも細心の注意が求められます。2005年に施行された改正薬事法によって、医薬品・医療機器・医薬部外品・化粧品の製造業者と輸入業者は、製造行為の外部委託が可能になりました。

メーカーから卸店の物流センターへ

医薬品メーカーから卸店の物流センターへのルートでは、医薬品メーカーが製造した医薬品を卸店の物流センターまで輸送します。全ての保管場所は、薬機法などの法令に適合しなければなりません。

医薬品の保管施設・設備には、清潔・採光・換気・必要な器具・適度な広さに加え、防塵、防虫、防鼠のための構造が必要です。届けられた医薬品は、品質維持のために適切な温度・湿度で管理されます。医薬品メーカーの物流センターに保管された医薬品は、医療機関からの発注に応じて、卸店の物流センターから発送されます。

卸店の物流センターから医療機関へ

卸店の物流センターから医療機関までのルートでは、医療機関からの注文があった際に、卸店の物流センターからピッキング・出荷・梱包・配送を実施します。医薬品ごとに定められた保管・輸送条件を遵守し、品質を維持しなければなりません。また、偽造医薬品混入防止のためのセキュリティ対策も重要です。

ディカル物流のカテゴリー

メディカル物流は、「医薬品」・「医療機器」と大きく2つのカテゴリーに分けられます。それぞれの物流の特徴を解説します。

1.医薬品

医薬品物流は、「医療用医薬品」や「一般用医薬品」の適正な物流を管理する業務です。また、薬機法上では「医薬部外品」と「化粧品」も規制の対象となります。社会性と公共性が高く、医薬品の製造、保管する物流センターの運営、受注、または医薬品の原材料や中間体の保管・輸送・配送などが当てはまります。

物流企業が保管や輸送、配送などに加えて、業態の申請代行まで実施することもあります。

2.医療機器

医療機器物流は、医師が治療で使用したり、患者のリハビリをサポートするなど多くの用途を持つ医療機器の適正な物流を管理する業務です。医療機器の保管や輸送・配送だけでなく、包装や表示、製品検査・修理対応など幅広い業務範囲を請け負うケースもあります。医療機器も医薬品と同様に、機器の特性に応じた管理を行うことの出来る事業拠点で管理されます。

3.医療機器製造業の許可

医療機器を製造する業者は機器に応じて4つに区分されており、該当する許可が必要です。物流業者であれば、一般的に「包装等区」が求められます。保管する倉庫ごとに許可が取得されていなければなりません。

薬品等の物流業務に必要な4つの許可

医薬品の物流業務をアウトソーシングする場合、必要となる業許可を取得していなければなりません。4つの業許可について解説します。

1.医薬品製造業の業許可

医薬品を製造及び保管する際には、医薬品製造業の業許可(業態)を取得しなければなりません。委託先で保管するだけでも業許可が必要です。医薬品製造業は「一般」「包装・表示・保管」「生物学的製剤等」「放射性医薬品」「無菌医薬品」に区分されており、事業拠点ごとに該当する業許可が取得されている必要があります。

2.医薬部外品製造業の業許可

医薬部外品を扱う際は、医薬部外品製造業の業許可が必要です。「一般」「包装・表示・保管」「無菌医薬部外品」に区分されており、該当する業許可が取得されている必要があります。近年は製品の安全性が重視され、薬機法で規制される製品は人体に作用するため、特に求められます。
医薬品と同様に、事業者ごとでなく事業拠点ごとに業許可が取得されていなければなりません。

3.医療機器製造業の業許可

医療機器はリスクに応じて製品区分が4つのクラスに分類されており、製造や販売等においてはリスクに応じた業許可が求められます。倉庫で行う包装・表示・保管等の業務も「製造業」と見なされるため、事業拠点ごとに製造業許可を取得する必要があります。

4.化粧品製造業の業許可

化粧品を外箱に詰める作業や、取扱説明書を外箱に入れる作業を委託する際には、化粧品製造業許可が必要です。保管のみを委託するケースでも同様です。化粧品製造業は「一般」「包装・表示・保管」に区分されています。

また、輸入業者が輸入した化粧品は、製造販売元による市場出荷判定が下りていません。法律上は製造途中にあると考えられているので、保管するには該当する製造業許可が必要です。

薬品物流の4つの留意点

医薬品物流では、温度管理、セキュリティ、トレーサビリティ、保管条件が欠かせません。それぞれの留意点を解説します。

1.温度管理

医薬品物流に、温度管理は欠かせません。適切な温度を維持して、医薬品の品質が低下しないように管理されなければなりません。医薬品の温度管理は「1~30℃の室温保管」「1~15℃の冷所保管」などに分類されます。その他に、「2℃~8℃の温度帯」や摂氏零度を下回る「超低温」での温度管理を要求される医薬品もあります。倉庫や輸送車両等の保管エリアは温度マッピングや継続的なモニタリングが不可欠です。

倉庫や輸送車両の保管エリア内が指定された温度内(1℃-30℃や2℃-8℃)に保たれていることと、温度モニタリングの場所(最も温度の高い場所と低い場所等)を決定するために実施されるのが温度マッピンクです。温度マッピングにより決定されたモニタリングの場所の温度を継続的にモニタリングすることで、製品の保管温度を逸脱することを防ぎます。
マッピングの測定方法や、実施間隔、モニタリングの方法などは、WHOのガイドラインなどを参考にして適切に実施されることが求められます。
医薬品ごとに温度等の保管条件が定められており、冷暗所や氷点下で冷凍保存しなければならない製品もあります。委託先の温度マッピングや保管状態の管理状況を確認することは、業者を選定する際に非常に重要なポイントとなります。

2.セキュリティ

医薬品物流においては、管理倉庫や輸送時、配送時のセキュリティに配慮しなければなりません。生体認証やIDカード認証等を導入し、予め決められた従業員しか保管スペースに入れないよう制限するといった、第三者が立ち入れないシステムが構築されていることが必要です。保管スペースに監視カメラが設置されており、不正な作業や盗難を防止する措置などがきちんと取られている業者であるかのチェックは不可欠です。

3.トレーサビリティ

トレーサビリティとは、医薬品がどのルートで利用者の手元に届いたかを追跡可能にすることです。医薬品とは、身体のなかに取り入れたり、身体に触れたりするものです。製造後どのようなルートを辿ったのか明らかにすることで、安心して利用してもらえます。

近年では、医薬品を海外と輸出入することも増加しています。表示と異なる国で製造する悪質業者もあるため、委託先業者にてトレーサビリティがどのように整えられているかも確認が必要でしょう。

4.GDPガイドラインについて

厚生労働省は、2018年に「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」を策定しました。このガイドラインのなかでは、9つの章にわけて保管条件を定義しています。それぞれの章の見出しは、以下のとおりです。委託先業者がそれぞれどのような取り組みを行っているのかを比較してみるのも良いでしょう。

  • 第1章:品質マネジメント
  • 第2章:職員 第3章:施設及び機器
  • 第4章:文書化
  • 第5章:業務の実施(オペレーション)
  • 第6章:苦情、返品、偽造の疑いのある医薬品及び回収
  • 第7章:外部委託業務
  • 第8章:自己点検
  • 第9章:輸送
※参考:医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン|厚生労働省

とめ

医薬品物流とは、その名の通り医薬品を扱う物流業務です。品質を維持するには厳格な管理が必要で、2005年の法改正によって、医薬品・医療機器・医薬部外品・化粧品の製造業者と輸入業者は、製造行為の外部委託が可能になりましたが、委託先の事業拠点ごとに該当する業許可が必要です。

安田倉庫株式会社は、創業100年を誇る物流企業です。首都圏を中心に、全国へ物流事業を展開しています。医薬品物流にも対応していますので、外部委託先の物流企業を探している方は、お気軽にお問い合わせください。