
医薬品物流の6つの留意点
必要な許可やアウトソーシングするメリットまで解説
この記事では、メディカル物流(医薬品物流等)のカテゴリー、留意点に加えて、アウトソーシングするメリットや注意点などを解説しています。アウトソーシングする際におさえるべきポイントをまとめたチェックシートもご用意していますので、検討している方は参考にしてください。
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→ メディカル物流のアウトソーシング先を選ぶ際におさえるべき7つのポイント
メディカル物流(医薬品物流等)とは
その名の通り、医薬品等を扱う物流業務です。医薬品の品質を維持するには、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や厚生労働省が発出したGMP省令、GDPガイドライン(医薬品の適正流通基準)などに従い、厳格な管理が必要です。
具体的には、全工程で適切な温度管理と品質管理が欠かせず、工場や倉庫で保管・梱包・加工する際にも細心の注意が求められます。2005年に施行された改正薬事法によって、医薬品・医療機器・医薬部外品・化粧品の製造業者と輸入業者は、製造行為の外部委託が可能になりました。
●メーカーから卸店の物流センターへ
医薬品メーカーから卸店の物流センターへのルートでは、医薬品メーカーが製造した医薬品を卸店の物流センターまで輸送します。すべての保管場所は、薬機法などの法令に適合しなければなりません。
医薬品の保管施設・設備には、清潔・採光・換気・必要な器具・適度な広さに加え、防塵・防虫・防鼠のための構造が必要です。届けられた医薬品は、品質維持のために適切な温度・湿度で管理されます。医薬品メーカーの物流センターに保管された医薬品は、医療機関からの発注に応じて、卸店の物流センターから発送されます。
●卸店の物流センターから医療機関へ
卸店の物流センターから医療機関までのルートでは、医療機関からの注文があった際に、卸店の物流センターからピッキング・出荷・梱包・配送を実施します。医薬品ごとに定められた保管・輸送条件を遵守し、品質を維持しなければなりません。また、偽造医薬品混入防止のためのセキュリティ対策も重要です。
メディカル物流のカテゴリー
メディカル物流は、「医薬品」・「医療機器」と大きく2つのカテゴリーに分けられます。それぞれの物流の特徴を解説します。

1.医薬品
医薬品物流は、「医療用医薬品」や「一般用医薬品」の適正な物流を管理する業務です。また、薬機法上では「医薬部外品」と「化粧品」も規制の対象となります。社会性と公共性が高く、医薬品の製造、保管する物流センターの運営、受注、または医薬品の原材料や中間体の保管・輸送・配送などが当てはまります。
物流企業が保管や輸送、配送などに加えて、業態の申請代行まで実施することもあります。
2.医療機器
医療機器物流は、医師が治療で使用する、患者のリハビリをサポートするなど多くの用途を持つ医療機器の適正な物流を管理する業務です。医療機器の保管や輸送・配送だけでなく、包装や表示、製品検査・修理対応など幅広い業務範囲を請け負うケースもあります。医療機器も医薬品と同様に、機器の特性に応じた管理を行うことのできる事業拠点で管理されます。
医療機器を製造する業者は機器に応じて4つに区分されており、該当する許可が必要です。物流業者であれば、一般的に「包装等区」が求められます。保管する倉庫ごとに許可が取得されていなければなりません。
医薬品物流の6つの留意点
医薬品物流では、温度管理、セキュリティ、トレーサビリティ、保管条件、業許可、BCP(事業継続計画)が欠かせません。それぞれの留意点を解説します。
1.温度管理
医薬品物流に、温度管理は欠かせません。適切な温度を維持して、医薬品の品質が低下しないように管理されなければなりません。医薬品の温度管理は「1~30℃の室温保管」「1~15℃の冷所保管」などに分類されます。その他に「2~8℃の温度帯」や摂氏零度を下回る「超低温」での温度管理を要求される医薬品もあります。倉庫や輸送車両の保管エリアは温度マッピングや継続的なモニタリングが不可欠です。
倉庫や輸送車両の保管エリア内が指定された温度内(1~30℃や2~8℃)に保たれていることと、温度モニタリングの場所(最も温度の高い場所と低い場所等)を決定するために実施されるのが温度マッピングです。温度マッピングにより決定されたモニタリングの場所の温度を継続的にモニタリングすることで、製品の保管温度を逸脱することを防ぎます。
マッピングの測定方法や、実施間隔、モニタリングの方法などは、WHOのガイドラインなどを参考にして適切に実施されることが求められます。
医薬品ごとに温度等の保管条件が定められており、冷暗所や氷点下で冷凍保存しなければならない製品もあります。委託先の温度マッピングや保管状態の管理状況を確認することは、業者を選定する際に非常に重要なポイントとなります。
2.セキュリティ
医薬品物流においては、管理倉庫や輸送時、配送時のセキュリティに配慮しなければなりません。生体認証やIDカード認証等を導入し、あらかじめ決められた従業員しか保管スペースに入れないよう制限するといった、第三者が立ち入れないシステムが構築されていることが必要です。保管スペースに監視カメラが設置されており、不正な作業や盗難を防止する措置などがきちんととられている業者であるかのチェックは不可欠です。
3.トレーサビリティ
トレーサビリティとは、医薬品がどのルートで利用者の手元に届いたかを追跡可能にすることです。医薬品とは、身体の中に取り入れたり、身体に触れたりするものです。製造後どのようなルートをたどったのか明らかにすることで、安心して利用してもらえます。
近年では、医薬品を海外と輸出入することも増加しています。表示と異なる国で製造する悪質業者もあるため、委託先業者でトレーサビリティがどのように整えられているかも確認が必要でしょう。
4.保管条件(GDPガイドラインについて)
厚生労働省は、2018年に「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」を策定しました。このガイドラインの中では、9つの章に分けて保管条件を定義しています。それぞれの章の見出しは、以下の通りです。委託先業者がそれぞれどのような取り組みを行っているのかを比較してみるのもよいでしょう。
第1章:品質マネジメント
第2章:職員 第3章:施設及び機器
第4章:文書化
第5章:業務の実施(オペレーション)
第6章:苦情、返品、偽造の疑いのある医薬品及び回収
第7章:外部委託業務
第8章:自己点検
第9章:輸送
※参考:医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン|厚生労働省
5.業許可
➀医薬品製造業の業許可
医薬品を製造及び保管する際には、医薬品製造業の業許可(業態)を取得しなければなりません。委託先で保管するだけでも業許可が必要です。医薬品製造業は「一般」「包装・表示・保管」「生物学的製剤等」「放射性医薬品」「無菌医薬品」に区分されており、事業拠点ごとに該当する業許可が取得されている必要があります。
②医薬品卸売販売業の業許可
医薬品を出荷する際には、医薬品卸売販売業の業許可(業態)を取得しなければなりません。
基本的に医薬品卸売販売業は、委託者であるメーカーが申請します(例外的に物流業者が申請する場合もあります)。また、医薬品が保健衛生上支障をきたすおそれがないよう営業所ごとに医薬品営業所管理者(薬剤師)の設置も必要になります。
6.BCP(事業継続計画)*
災害に強いロケーションや施設設計など、各種BCP対応を強化する必要があります。一般的に医薬品を扱う倉庫には耐震または免震構造を採用し、停電時でも電源供給可能な非常用発電機の設置や倉庫敷地内での配送用トラックの燃料備蓄など、災害時にも事業継続ができるよう備える必要があるでしょう。
*BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)。企業が自然災害、大火災、テロ攻撃等の緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段等を取り決めておく計画をいう。(中小企業庁「中小企業 BCP 策定運用指針」より)医薬品物流をアウトソーシングするメリット
医薬品市場は広がりつつあり、その競争の中で注目されているのが物流のアウトソーシングです。特に医薬品物流では、コスト以上にサービス品質を重要視する傾向にあることが、海外の研究でも明らかになっています。
医薬品や医療機器のメーカーが自社で物流を担うのは容易ではありません。手間やコストを考えれば、確かなプロにアウトソーシングすることは有力な選択肢の一つです。
医薬品物流をアウトソーシングする主なメリットは以下の通りです。

1.コアビジネスに集中できる
医薬品物流は、単に保管・輸送業務にとどまりません。箱に詰める、梱包する、ラベルを貼るなどの細かな作業もすべて含まれます。これらを丸ごとアウトソーシングすることで、自社業務の効率化が図れるとともに、コアビジネスである製品開発やマーケティングにリソースを集中できます。
2.管理コストを削減できる
自社で倉庫を持ち、適切に医薬品を保管するためには、相当な設備投資や専門の人員が必要です。しかし専門業者にアウトソーシングすれば、それらは必要ありません。プロには知識やノウハウが蓄積されているため、効率的な管理方法によって医薬品物流の運用管理コストを大幅に削減できる可能性があります。
3.物流量の増加に対応できる
近年、物流量の増加やそれに伴う人材不足は、多くの企業で課題となっています。自社で物流を担っていると、物流量が増えたときに対応できない、従業員の負担が増加するなどの問題が生じます。その点、専門業者であれば、人員調整や物量量の増減などにも柔軟に対応することが可能です。
医薬品物流をアウトソーシングする際の注意点
医薬品物流をアウトソーシングするメリットは多いですが、事前に確認しておきたい注意点もあります。
アウトソーシングすることによる効果を最大化させるために、以下をご確認ください。
1.GDPガイドラインが守られているか
物流業者選びにおいて、まず確認しなければならないのは、GDPガイドラインをきちんと遵守しているかどうかです。医薬品物流ではGDPガイドラインの遵守は必須です。
安田倉庫では、医療用医薬品や一般用医薬品の製造・販売を行うお客様のために、GDPを見据えた保管管理、センター運営、配送インフラなどの物流サービスをご提供しております。
詳細はこちらをご確認ください。
2.サービスが充実しているか
自社に必要なサービスを提供できるかは重要なポイントです。医薬品の保管、卸業者への出荷、原材料の保管可否など、対応可能な範囲や質などを事前に確認しましょう。
3.拠点がどこにあるか
業者によって拠点、倉庫、配送エリアは異なります。検討を考えている業者がどのような展開をしているのか確認しておくことも大切です。
医薬品物流のアウトソーシング先を選ぶ際のポイントをチェックシートにまとめたお役立ち資料を以下からダウンロードできます。ぜひご活用ください。
メディカル物流のアウトソーシング先を選ぶ際におさえるべき7つのポイント医薬品物流のまとめ
医薬品物流とは、その名の通り医薬品を扱う物流業務で、品質を維持するには厳格な管理が必要です。2005年の法改正によって、医薬品・医療機器・医薬部外品・化粧品の製造業者と輸入業者は、製造行為の外部委託が可能になりましたが、委託先の事業拠点ごとに該当する業許可が必要です。
厳しい品質管理が求められる医薬品物流において、業務効率化、コスト削減、物流量増加への対応など、アウトソーシングにはさまざまなメリットがあります。
安田倉庫株式会社は、創業100年を誇る物流企業です。首都圏を中心に、全国へ物流事業を展開しています。医薬品物流にも対応していますので、アウトソーシング先を探している方は、お気軽にお問い合わせください。